ランニング前に動的ストレッチを行うと、関節の可動域が広がって動きが向上します。また、ストレッチを通じて身体がじんわり温まってくるでしょう。しかしランナーの中には、動的ストレッチがどのようなものか理解していない方が少なくありません。ここで具体的な上半身のストレッチ方法と共に、動的ストレッチについて詳しく解説します。
目次
静的ストレッチと動的ストレッチ
ストレッチには「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」という2つの種類があります。例えば前屈のようにじっくり筋肉を伸ばすのは「静的ストレッチ」ですが、走る前の運動としては適していません。静的ストレッチは疲労回復などを目的として、運動後など身体が温まった状態で行うと良いでしょう。身体が温まっていない状態でトレーニングやレース前に行うと、かえってパフォーマンスの低下を招く可能性があります。
これに対して「動的ストレッチ」は、関節部を動かしながら行うもの。血流が促されて身体が温まり、関節部が動きやすくなります。そのため、その後に行うランニングでパフォーマンスアップが期待できるでしょう。即効性があるため、トレーニングはもちろんレース本番でもウォーミングアップとして行うことをお勧めします。
上半身の動的ストレッチメニュー
それでは具体的に、上半身の動的ストレッチメニューを5つご紹介します。上半身は、特に肩や肩甲骨周りを意識したストレッチを行いましょう。なお、ここではいずれのストレッチも立位で行っていますが、場所が確保できれば座った状態でも構いません。
1. 肩甲骨内転


手順
- 両腕の肘を90度に曲げ、肘が肩の高さになるよう身体の前で上げる
- 手のひらを内側にして、そのまま腕を左右に開いていく
- 肩甲骨を寄せて限界まで開く
- 元の姿勢に戻り、これを繰り返す
注意点
- 腕ではなく肩甲骨を動かすよう意識する
- 腕を開いたとき肘が下がらないように注意する
- 腕と一緒に旨も開くようにすると肩甲骨が寄せやすい
2. 肘回し

手順
- 両手を左右それぞれの肩に乗せる
- 両手を離さずに肘を回す
- これを繰り返し、反対側も行う
注意点
- 両手は常に肩に添え、離れないようにする
- 肘は顔の真横を通って、できるだけ後ろにしっかり回す
3. 逆腕回し

手順
- 右手を真っすぐ上に、左手は真っすぐ下に伸ばす
- 肘を曲げず右手を前に、左手は後ろに大きく回す
- これを繰り返し、反対回しも行う
注意点
- 両手はバラバラにならないよう同時に動かす
- できるだけ脇が開かないよう後ろもしっかり回す
- 肘を曲げず腕は真っすぐなまま、大きな回転を意識する
4. 肩の内外旋

手順
- 両手を肩の高さで横に真っすぐに伸ばす
- 両手の平は下に向ける
- 右腕を前方向に、左腕を後ろ方向に捻る
- もとの状態に戻ったら、今度は逆側にそれぞれの腕を捻る
- これを繰り返す
注意点
- 肘が曲がったり腕が下がったりしない
- 手首だけでなく腕、そして肩までしっかり動かす
- 両腕が同時に動くよう意識する
5. キャットアンドドッグ


手順
- 足を肩幅に広げ、膝を軽く曲げて両手を置く
- 手で膝を押すようにして背中を上げて(丸めて)いく
- 肩甲骨を寄せながら、反対に背中を反らせていく
- これを繰り返す
注意点
- 背中を上げる際はお臍を覗き込むようにする
- 背中を反らせる際は顔も少し上げる
- 肘は曲げず腕を真っすぐに保つ
ウォーミングアップにもお勧め!
ここでご紹介したような動的ストレッチを行うと、日々のトレーニングやレース本番で動きの違いを実感できるはずです。ゆっくりした動きではありますが、意識的に行うと身体が十分に温められるでしょう。
ウォーミングアップと言えばジョギングなどを思い浮かべる人は多いかもしれません。しかし、あまり走るとウォーミングアップとはいえ疲労が溜まってしまいます。そのため、私はジョギングの代替として、動的ストレッチをウォーミングアップに取り入れています。次回は下半身の動的ストレッチをご紹介しますので、ぜひ合わせて実践してみてください。