トレーニングやレースで高いパフォーマンスを発揮するには、できるだけ疲労を残さないことが大切です。そのための疲労軽減法として、前回は食事と入浴にスポットを当てて取り上げました。疲労回復といえば、恐らくマッサージやストレッチをイメージする方は多いはず。しかし“なんとなく”筋肉を伸ばしたり押したりするだけで、効果的なマッサージやストレッチを行えている方は実のところ多くありません。ここで具体的な方法をご紹介しますので、ぜひ走った後のセルフケアとして取り入れてみてください。

疲労軽減に効果的なマッサージ方法

マッサージにはいくつかの種類があります。治療院等でも指圧やあん摩、整体、カイロプラクティックなど異なり、「どこに行けば良いのか」と迷った経験がある方は多いかもしれません。セルフケアとしてマッサージを行う場合、以下3つの違いを覚えておきましょう。

1. 圧迫法

対象となる部位を手や肘、あるいは用具を使って圧迫するもの。例えば手のひら全体で圧迫するのはもちろん、指先など狭い範囲で押すマッサージも含まれます。セルフマッサージではどうしても力に頼ってしまいますが、2人で行えば相手(の対象部位)に対して掛ける体重で力をコントロールして凝り固まった筋肉をほぐし、痛みを和らげたり疲労を軽減させたりすることが可能です。

2. 揉捏(じゅうねつ)法

筋肉を“揉む”ことでほぐすマッサージです。手のひら全体で対象となる部位をこねるように揉んだり、細かく指で挟むようにして揉んだり。血流を促すことで酸素や栄養素が巡りやすくなるほか、老廃物を除去することで疲労軽減を見込めます。痛み等が伴わず疲労感があるという場合には、この揉捏法を主に用いると良いでしょう。

3. 叩打法

手のひらや拳、腕などでリズムよく叩く方法。一定のリズムで叩き、刺激を与えることで筋肉等の働きが活発化します。なお、優しく叩くことでリラックス効果が期待でき、一通りマッサージを終えた後に行う方も少なくありません。

4. 摩擦法

摩擦法は2つに分かれ、手や指などで対象となる部位の皮膚を摩(さす)る方法が「軽擦法」です。力まずに軽く、皮膚から手や指などを離さず繰り返し摩ります。これにより、皮膚から温度が上がって血流が促進。さらに圧迫法や揉捏法へと繋げると、さらなるマッサージ効果の向上も期待できます。そして、この軽擦法にやや強めの圧迫を加えたものが「強擦法」。軽擦法より筋肉に刺激が入り、凝り固まった筋肉をほぐすことが可能です。

これらはいずれも、痛みや疲労感のある部位に対して行いましょう。また、無理に力を入れると、かえって筋肉を傷つけてしまう可能性があります。これまで、マッサージし過ぎて“揉み返し”に陥ったことのある方もいるはず。特に圧迫法や揉捏法(強擦法を含む)、叩打法では、マッサージ後に痛みが残らないよう力加減に注意してください。

知っておきたい「筋膜リリース」

マッサージ法の1つとして、ぜひ疲労軽減法として取り入れてもらいたいものに「筋膜リリース」があります。「リリース」という言葉から筋肉を“剥がす(離す)”ようなイメージを持たれる方が多いようですが、実際には筋肉を覆っている筋膜を滑らかに動くようにするもの。そして、その動きを阻害する要因となっている固まった部分を「トリガーポイント」と呼びます。

筋膜リリースは専用の用具を使い、このトリガーポイントをほぐして筋膜が動きやすくします。よく無暗に筋肉全体をポール等でゴリゴリ刺激している人がいますが、これは効果的ではありません。一通り筋肉全体を刺激して痛む場所、固くなっている場所を見つけたら、その部分を中心にやや圧迫します。突起のある専用のローラーなどがあれば望ましいですが、例えばテニスボールなどでも可能。もっとも突起した部分を当てた状態で、左右前後に動いたり真っすぐ押し当てたりしてみましょう。

ランニング後にすぐストレッチする人がいますが、できればマッサージ、特に筋膜リリースを行ってからストレッチに入ってください。なぜなら筋肉が固まっている、あるいは筋膜の動きが悪い状態でストレッチしても、十分に筋肉が伸びないから。これでは、ストレッチによる疲労軽減効果は得られません。

疲労軽減に効果的なストレッチ方法

ランニングによって疲労した筋肉は、ストレッチでしっかり伸ばしてください。身体をクールダウンさせながら血流が促進され、筋疲労の回復が期待できます。また、ストレッチには柔軟性を高める効果もあり、怪我の予防にも繋がるでしょう。ここでは、部位別のストレッチ方法をご紹介します。

1. 脹脛(ふくらはぎ)

  1. 真っすぐな姿勢で立ちます
  2. 両膝を曲げず片足を少し前に出します
  3. お尻を斜め後方に下げながら、残した方の足は膝を曲げていきます
  4. 同時に、前に出した足は膝を曲げず、つま先を挙げていきます
  5. 脹脛が引っ張られるような感覚になったら、20~30秒そのままキープします
  6. 元に戻し、これを数回繰り返しましょう
  7. 反対側の足でも同じ動作を行ってください

上半身は背中を曲げず、真っすぐな姿勢を維持してください。脹脛をメインとしていますが、ハムストリングスやお尻も伸ばすことのできるストレッチです。

2. 太もも

  1. 膝立ちの状態になり、両膝は腰幅程度に開きます
  2. 片足を前に出し、足の裏を地面につけた状態で膝を90度に曲げます
  3. 残した方の足を両手で掴み、踵がお尻につくくらい持ち上げます
  4. 20~30秒キープしたら足を下ろし、これを数回繰り返します
  5. 反対側の足でも同じ動作を行ってください

目線を前に向けて、上半身の姿勢は真っすぐキープしましょう。左右に身体がふらつかないよう注意してください。

3. ハムストリングス

  1. 長座の状態で座ります
  2. 片足を両手で持ちます
  3. 両手で持った足を挙げながら寝ころびましょう
  4. 挙上した状態で20~30秒キープしたら元の姿勢に戻ります
  5. これを数回繰り返し、反対側の足でも同じように動作しましょう

挙上した足はできるだけ膝が伸びるよう意識してください。どうしても伸ばしにくい場合は、静止せず前後に揺れることでも伸ばせます。

4. 足裏

  1. つま先を立てた状態で座ります
  2. 足裏のアーチを伸ばすようにしながら、体重を乗せていきましょう
  3. 足裏が伸びているのを感じながら20~30秒キープします
  4. これを数回繰り返してください

5. 首

  1. 立位(もしくは座位)の状態で両手を頭の後ろで組みます
  2. 背筋を伸ばし、肩を丸めないようにして、両手で頭を前に押していきましょう
  3. 首の後ろが伸びているのを感じながら20~30秒キープします
  4. これを数回繰り返してください

片手で頭の反対側を持ち、引っ張るようにすると首の横から肩にかけて伸ばすこともできます。このときも、肩が上がらないよう姿勢をキープしてください。頭は身体の中でも特に重量のある部位です。長時間のランニングでは、この頭を支える首回りも疲れやすくなります。あまり意識してストレッチしない部位ですが、ぜひ疲労軽減のため実践してみてください。

まとめ

マッサージはご紹介した4つの方法で、痛みや違和感、疲労感のある部位に行ってください。ストレッチは代表例をいくつか取り上げましたが、まだまだ豊富な種類があります。例えば腕振りが重く感じる場合は肩から背中、肩甲骨周りのストレッチを取り入れると良いでしょう。また、股関節周りは横に伸ばしたり開いて伸ばしたりするのもおすすめです。疲労軽減までを1つのトレーニングと考え、できるだけ常に高いパフォーマンスを維持するよう心掛けてください

三河 賢文

“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主催。マラソン大会の企画・運営にも携わる。
“運動できる”コワーキングスペース『Plus Fit』オーナー、ナレッジ・リンクス(株)代表、NPO法人HASHIRU理事。ORPHE TRACKアンバサダー。4人の子を持つ大家族フリーランス。